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アトピー性皮膚炎の治療は、食物アレルギーを体の中から改善することが大切。「除去食」「抗原除去」の他に「自己血流法」「耐性導入法」などの新しい治療法で、アトピー性皮膚炎の根本治療に積極的に取り組む坂谷先生を取材。乳児湿疹との違い、ステロイド剤についても聞きました。|さかたに小児科|坂谷達一郎先生 | 病気や症状。治療や予防に役立つ 病院・医院・クリニック情報サイト『広島ドクターズ』
(この記事は2014年10月6日時点の情報です)

坂谷達一郎 先生(小児科)

子どものアトピー性皮膚炎は食べ物アレルギーが原因

 
さかたに小児科
【住所】広島県広島市南区宇品神田5-26-17
【TEL】 082-251-0007
 
アトピー性皮膚炎の治療は、食物アレルギーを体の中から改善することが大切。「除去食」「抗原除去」の他に「自己血流法」「耐性導入法」などの新しい治療法で、アトピー性皮膚炎の根本治療に積極的に取り組む坂谷先生を取材。乳児湿疹との違い、ステロイド剤についても聞きました。|さかたに小児科|坂谷達一郎先生
アレルギーの治療・研究を自身のライフワークとして積極的に取り組む坂谷先生
 
乳児期に発症し、強い湿疹が続くアトピー性皮膚炎。医師の間でも治療方針やステロイド外用剤の扱いや食事療法の是非について意見が分かれ、お母さん方も戸惑うことが多いと思われます。
今回は、アトピー性皮膚炎治療を30年来のライフワークとしている、南区宇品神田の「さかたに小児科」を訪れ、坂谷達一郎先生のお話を伺いました。「自己血療法」などの新しい治療法を取り入れ、体の中からアレルギー体質を改善していく治療を基本とする坂谷先生のもとには、遠方からも多くの患者さんが通院しています。
食べ物アレルギーが原因で起こる乳幼児期のアトピー性皮膚炎について、そのメカニズムや治療法など、興味深いお話を聞かせて頂きました。

アトピー性皮膚炎の特徴について教えてください。

アトピー性皮膚炎は、全身にかゆみを伴う湿疹が出てきて、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患です。ほとんどが乳幼児期に発症し、早い子で生後2、3週間から症状が現れます。
乳幼児期のアトピー性皮膚炎は、ほとんどすべて「食べ物アレルギー」だと考えられます。食べ物のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)は、その子が生まれてから最も早く獲得されるアレルゲンであり、また最も大量に連日取り込まれるアレルゲンですから、アレルゲンの特定は治療において重要なカギとなります。

赤ちゃんだと乳児湿疹と区別がつきにくそうですね。

乳児湿疹というのは実は軽いアトピー性皮膚炎です。病気でも軽いものは自然に治ってしまいます。例えば風邪でも軽いのは一晩暖かくして寝ると治ってしまいます。軽くても風邪は風邪と言ってかまわないのです。病気の軽い、重いを見極めて、軽いものは軽いなりの治療、重いものは重いものなり治療手段を提示することが重要です。
アトピー性皮膚炎というと即、治りにくいという印象があって心配されますが、乳児のアトピー性皮膚炎の大多数は軽く、ひとりでに治る、あるいは軽い治療手段でも治ることが多い病気です。実は乳児のアトピー性皮膚炎は1年後には85%くらいが完全に、あるいはほぼ治ります。

そもそも、アレルギーはどうして起こるのですか?

私たちの体は、細菌やウイルスなどの「外敵」が入ってくると敏感に反応して、抗体(武器)や白血球(兵隊)を大量に生産し、外敵と闘ったり排除して病気から体を守ろうとします。このような仕組みを「免疫」と呼びますが、この免疫の働きが時として身の回りにあるありふれた物質に対して起こってしまうことがあります。無害もしくは少量なら体に入っても害のないものに対して過剰反応してしまい、細菌やウイルスと同じように物質を排除しようと働き過ぎる結果、かえって自分の体に害を与えてしまいます。これがアレルギーです。
例えば、花粉などは本来、それ自体は毒性を持たないので、少々なら体に入ってもいいはずですが、体の免疫にそういう区別ができなかったために、花粉に対して過剰に反応してしまい、くしゃみや鼻水が止まらないなどのつらい花粉症の症状が出ます。本来は体を守るための反応が、免疫がバランスを崩してしまったことで、自分自身を苦しめてしまうアレルギー反応となって表れるのです。
アレルギーには、食事性アレルギー(牛乳、卵など)、吸入性アレルギー(ダニ、ガンジダ、猫の毛、スギ花粉など)、接触性アレルギー(ゴム、ウルシなど)、金属アレルギー(ニッケル、クロムなど)、薬剤アレルギー(ペニシリン、アスピリンなど)があります。
思春期、成人になってから現れるアトピー性皮膚炎は、吸入性アレルギーによることが多いですが、乳幼児の場合はほぼ食べ物アレルギーと言っていいでしょう。

食べ物アレルギーの反応が皮膚に起こるのはなぜですか?

食べ物のアレルギーが皮膚に起こるとは限っていませんが、乳児では圧倒的に皮膚に出ます。年長児では、消化器、呼吸器などに出ることもあります。アレルギーは体にとってむしろ害のある免疫反応ですが、そもそもは異物(アレルゲン)を体の外に排出するという働きがあります。花粉症であれば、鼻水や涙を出して花粉を流しだします。ダニなどのアレルゲンでは咳やくしゃみで鼻や気管から吹き飛ばします。食べ物アレルギーでは、入ってきたアレルゲンの量が多い場合、胃に入った時点で嘔吐してアレルゲンを捨てます。やや少量だと胃を通過したあと、下痢として下から出します。これが、消化管アレルギーです。もっと少量だと、アレルゲンは腸から吸収されて血管の中に入ってしまいます。アレルゲンが血液を介して脳や肝臓、腎臓、心臓など重要な臓器に捨てると、重篤な病気を引き起こすかもしれません。しかし、皮膚に棄てるなら生命に危険が及ぶことはありません。そのため皮膚に棄てるのですが、皮膚といえどもまったく安全な捨て場所ではなく、血管の中の好酸球やリンパ球が皮膚に動員されて慢性的な皮膚炎が起きてしまいます。
つまり、アトピー性皮膚炎というのは、ごく少量の食物アレルゲンをやむなく処理した結果として起きているアレルギー性炎症です。

アトピー性皮膚炎の治療について教えてください。

アトピー性皮膚炎は皮膚の病気ですが、皮膚にターゲットを置いて治療をしてもよくはなりません。大元を考えるとアレルゲンであり、そのアレルゲンに対して敏感すぎる自分の免疫です。最初のステップとしては、食物アレルゲンを除去することです。食物アレルゲンでも頻度的に多く、また、症状に与える影響が大きい順番はほとんど決まっています。卵・牛乳、そして小麦、大豆、その次は米という順です。他の食物は皮膚を一時的に悪化することはあっても持続的に悪い状態を作り出すことはまずありません。
その次に、食物アレルゲンに過敏になりすぎる、免疫の在り方を正常に変えることです。このためには「自己血療法」「耐性導入法」を行います。
皮膚の乾燥は皮膚炎の結果にすぎず、皮膚炎の原因にはなりえません。スキンケアも大事ですが、皮膚炎をこれ以上悪化させないという治療であって、皮膚炎を治す治療ではありません。

「自己血療法」とはどのような治療ですか?

先ほど、アレルギーは免疫のバランスが悪いために起こるとお話しました。「自己血療法」とは、採血した自分の血液を注射することで免疫のバランスを正常に近づける治療です。
免疫システムの司令塔は、体のリンパ球に向けて免疫よもっと働けという信号かあるいは休めという信号を絶え間なく出し続けています。その司令塔が間違った判断をして誤った指令を出すと、免疫のバランスが崩れてし、病気になったり、アレルギー症状が出てしまうのです。自己血療法は間違った指令で免疫が働きすぎている場合、それを免疫の司令塔に向けて知らせる働きをします。

免疫のバランスを調整する機会を与えるんですね。

自己血療法は静脈から採血した血液を皮下に注射します。注射された血液の中のリンパ球はただちに死んでしまい、体の中のゴミになってしまいます。一方、体の中を巡回していらないものを片づける「マクロファージ」という白血球がいて、死んだリンパ球はただちにマクロファージが回収し、司令塔のリンパ球に届けます。このとき司令塔のリンパ球は死んだリンパ球が持っている免疫情報を改めて読み取ります。実はその免疫情報は元はと言えば司令塔のリンパ球自身が出した情報なのです。リンパ球の司令塔自身は自分が出した命令が目論見とは違っていたことを認識するのです。その結果司令塔は改めて免疫情報を少し修正します。
例え話をします。例えば今自分の顔がどんな表情をしているか、ある程度想像がつきますよね。それは大脳が表情筋を支配しているからなのです。ところが怒りや悲しみの感情が高ぶった時に、自分がイメージしていた以上の行き過ぎた表情になっていることがあります。鏡を見て初めて、「こんなに怖い顔になっていたんだ」と知り、我に返りますよね。これはちょっと行き過ぎだと気付き、感情をコントロールしたとき、正常に近い顔に戻ります。
この鏡の役割をしてくれるのが自己血です。採血の量は、体重10キロの子で0.8CC。成人女性は2.5CC、男性だと3.0CCで、人によって継続が必要な回数は異なりますが、重度から軽度のアレルギーまで、症状の緩和はすぐに期待できます。自分の血液ですから、副作用の心配はありません。

「耐性導入法」はどんな治療ですか?

アレルゲンとなる食べ物を食べないようにする、除去食療法は現在、標準的な治療法です。これでアトピー性皮膚炎の湿疹は治ります。しかし、アレルゲンのものを食べても症状が出ないようにする治療法は今までありませんでした。アレルゲンの食べ物を再び食べられるようにするのが耐性導入法です。そのためには少量から少しずつ食べていくのですが、いったい少量とはどのくらいの量なのか、それを決めなければなりません。それを決めるのが限界値検査で、これくらい少量であれば絶対に症状が出ないという量から少しずつ増やして初めて症状が出る量を限界値と言います。この限界値を求めたあと、これを少しずつ増やすような食べ方をすればいいのです。ただし、少しずつ増やすとは言っても、いろんな工夫をしないと確実に増えてはいきません。大まかに言うと自己血を利用する方法と、準備摂取法の二つで行います。


アトピー性皮膚炎の治療は、食物アレルギーを体の中から改善することが大切。「除去食」「抗原除去」の他に「自己血流法」「耐性導入法」などの新しい治療法で、アトピー性皮膚炎の根本治療に積極的に取り組む坂谷先生を取材。乳児湿疹との違い、ステロイド剤についても聞きました。|さかたに小児科|坂谷達一郎先生
アレルギー治療で定評のある「さかたに小児科」は、広電「宇品5丁目」駅からすぐ。
 

ステロイド剤は使わない方がいいのですか?

ステロイド外用剤の副作用を心配して、ステロイド剤を一切拒否する患者さんは少なくありません。しかし、アトピー性皮膚炎に苦しむ期間を短くするためにステロイド剤は欠かせない薬です。
私の治療の基本は除去食、抗原除去と自己血療法そして耐性導入法による根本治療でステロイド剤には頼りません。しかし、これらの治療は開始したからと言ってすぐに治るわけではありません。症状がひどい間、痒みを抑えて少しでも楽にさせるのは子どものため、親の務めです。ステロイド剤を使ったから一時的によくなってもあとあと悪いとか、副作用が必ず出る、などということはありません。

アトピー性皮膚炎の治療に力を入れるようになったきっかけは何ですか?

研究生活から病院勤務に戻ったときに、食べ物アレルギーに力を入れている先生に出会ったことで、興味を持つようになりました。それに、もともと自分の子どもがひどいアトピー性皮膚炎を持っていたんですね。ステロイド剤で抑えるだけでなく、根本的に治してやりたいという思いが強かったんです。
最初の頃は除去食ばかりやっていましたが、子どもが小学3年生になった頃に、偶然、自己血療法というものにめぐりあったのです。湿疹や喘息が改善され、食べ物を制限しなくてもよくなり、喜んでいるわが子を見て、もっと早くから自己血療法や耐性導入法に携わっていれば良かったと思いました。
自己血療法は今までになかった治療法ですから、この治療を行っている医師は全国でも数人しかいません。新しい治療の確立というのは時間がかかるもので、私1人の手には負えないことは承知ですが、徐々に関心が高まってきているので、今後も治療・研究に力を注ぎ、誰がみても効いていると認められる治療にしていきたいです。そして、アレルギーに苦しんでいる多くの子どもを助けるきっかけになれば嬉しいですね。

医師のプロフィール

坂谷達一郎先生

●広島大学医学部 卒業
●広島大学医学部 小児科に入局
●JA広島総合病院、広島大学小児科勤務の後、放射線影響研究所において白血球の研究に従事。福島生協病院小児科科長を経て、さかたに小児科を開業。

 

 
 

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