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大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、意識障害やけいれんなどの発作を繰り返す大脳の病気「てんかん」。同じテレビアニメを見た全国の子どもが強い光刺激を受けて、同時刻にけいれんや意識障害を起こした「ポケモンショック」は記憶に残っている方もいるのでは? てんかんは大人よりも子どもが発症しやすい病気ですが、前兆に気付きにくいものも多く、知能が低下した感じで現れることもあるそうです。|むらき小児科|村木幸太郎 先生 | 病気や症状。治療や予防に役立つ 病院・医院・クリニック情報サイト『広島ドクターズ』
(この記事は2014年11月21日時点の情報です)

村木幸太郎 先生(小児科)

有病率は100人に1人。子どもに多い神経の病気「てんかん」

 
むらき小児科
【住所】広島県広島市西区庚午北2-22-4 高須サンフラワービル2F  
【TEL】 082-527-0215
 
てんかん 癲癇 てんかん発作 欠神発作 けいれん ひきつけ ぼんやり 発達障害 意識 大脳の神経細胞 ポケモンショック 知能が低下 迷走神経治療術 抗てんかん薬 脳波検査 重積状態 乳児重症ミオクロニーてんかん 熱性けいれん 脳炎 脳症 インフルエンザ テオフィリン 抗ヒスタミン剤 鼻水止め 花粉症 ぜんそく 前頭葉 頭頂葉 側頭葉 後頭葉 口から泡を吹いて突然倒れる SMEI むらき小児科 村木幸太郎 先生
てんかんや発達障害などの小児神経の病気に詳しい村木院長。
 
大人よりも子どもの方がかかりやすい、てんかん(癲癇)。てんかんは、けいれんを起こして突然倒れるイメージが強いですが、てんかんには多くの種類があって発作の現れ方は様々です。
例えば、子どもがぼんやりしていることが増えたのは、集中力が足りないせいだと思っていたら、一時的に意識を失うてんかん発作を繰り返していることもあるそうです。
今回は、西区にある「むらき小児科」を訪れ、てんかんや発達障害などの小児神経に詳しい、村木幸太郎院長に小児てんかんについて伺いました。
てんかん発作は前ぶれもなく現れることが多く、突然わが子にけいれんが起こると、お母さんはパニックになってしまいます。そこで、てんかん発作や熱性けいれんが起こった時に、どのように対処すれば良いかも教えて頂きました。

てんかんは子どもに多い病気ですか?

「てんかん」は、種類によっては成人で発症するものもありますが、患者全体の7割は小児で、てんかんは乳幼児期から学童期に発症しやすい病気です。きちんと治療すれば治っていく良性てんかんが多いですが、中には乳児重症ミオクロニーてんかん、ウエスト症候群、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群といった難治性のてんかんもあります。
「てんかん」と聞くと、口から泡を吹いて突然倒れる病気という印象がありますが、てんかん発作は人によって多彩で、意識障害、けいれん(ひきつけ)を起こしたり、視覚、聴覚、言語に障害が出ることもあります。
てんかんは珍しい病気のように思われるかもしれませんが、全国のてんかん患者数は100万人にのぼると推定されており、100人に対し1人の割合で見られる決して珍しくない病気ですので、てんかんについて正しい知識を知ってもらいたいと思います。

てんかんは具体的にどんな病気ですか?

てんかんは、運動、思考、感覚などの中枢である大脳の神経細胞が過剰に興奮するために発作を繰り返す病気です。大脳に異常が起こる原因としては、外傷や脳炎といった脳の損傷による場合(症候性てんかん)もあれば、発作のタイプから原因は推定されるが限定できない場合(潜因性てんかん)や、大脳に特定の原因が見当たらない場合(特発性てんかん)があります。
小児のてんかんは、潜因性てんかん、特発性てんかんであることが多いです。

どうして発作を繰り返すのですか?

大脳の神経細胞が過剰に興奮することで電気信号の乱れが起こり、体の動きが正常にコントロールできなくなることが、てんかんの発作です。発作は1度だけではなく、何度も繰り返します。
大脳は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分かれていて、部位によって働きが異なるため、大脳のどの場所で異常が起きているかによって、発作の形は変わってきます。
例えば後頭葉は、眼から入ってきた光信号を画像として認識する役割があります。後頭葉の障害が原因でてんかん発作が起こる場合は、光がチカチカするなどの視覚発作が現れます(後頭葉てんかん)。
また、前頭葉は物事を考えて判断する人間的な思考を司る部分で、前頭葉に障害があった場合は、手足をバタバタさせるなど複雑な動作をする発作が起こります(前頭葉てんかん)。
脳の一部分が過剰興奮したために体の一部分に症状が現れる発作を「部分発作」と呼びます。意識がある場合を「単純部分発作」、意識がない場合を「複雑部分発作」と言うのですが、始めは意識があっても次第に意識を保つ脳の神経を巻き込んで意識がなくなっていくこともあります(二次性全般化)。
これに対して、脳全体が過剰興奮したために、いきなり意識を失って全身にけいれんが起こるような発作を「全般発作」と言います。

発作の現れ方は様々なんですね。

意識を失う発作の中にはバタッと倒れてしまうのではなく、一時的に意識がなくなって動作が止まってしまうような発作もあります。これは欠神(けっしん)発作といって、子どもに多いてんかんです。ご飯を食べている時にふと動きが止まって、物思いにふけっているのかと思ったら、何事もなかったかのようにまた食べ出すといった感じです。
また、授業中にぼんやりしていることが多くなったり、会話が途切れるといったことが目立つようになります。ただ、目に見えるけいれんではないため、その子の集中力や意欲が足りないせいだと誤解して、見過ごしてしまうこともあります。
欠神発作は5〜7歳の女の子がかかりやすい傾向にあります。小児のてんかんは年齢依存性といって、どのタイプのてんかんが何歳くらいにかかりやすいといった特徴があり、診断を行う際の目安になります。

てんかん発作はどんな状況で起こりやすいのですか?

発作は突然起こることが多いですが、ある特定の状況下で発作が起こりやすくなることもあります。
数年前にテレビのアニメ番組を見ていた子どもたちが、全国で同時刻にけいれんや意識障害を起こした事件がありました。「ポケモンショック」と言われる事件です。放映中に赤い光の点滅がチカチカ繰り返すシーンが多かったために、テレビを食い入るように見ていた子どもたちに、発作を誘発するような強い光刺激を与えてしまいました。
もちろんテレビを見ていた子ども全員が発作を起こしたわけではありません。後頭葉に何か問題があったり、光に敏感な体質の子が、テレビから受けた光刺激によっててんかんの発作を引き起こしたものと考えられます。
ポケモンショックはニュースでも大きく取り上げられ、小児てんかんが広く知られるようになりました。またこの事件以降、子ども向けのアニメ番組では、最初に「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てください」というテロップが表示されるようになりました。

てんかん発作を誘発しやすいものは他にもありますか?

鼻水止めや花粉症のお薬などに含まれる古いタイプの抗ヒスタミン剤は、けいれんを誘発することがあります。ヒスタミンは体の中にある物質で、意識をはっきりさせる作用があるのですが、「抗ヒスタミン剤」はそのヒスタミンの作用を抑制する効果があります。古いタイプは意識低下や眠くなるといった副作用があり、けいれんを起こしやすくすることから、使用を控えている先生もいます。
また、ぜんそくのお薬のテオフィリンも注意が必要です。テオフィリンは興奮作用があり、不眠やけいれんを起こしやすくします。気管支拡張剤として昔はよく使われていたのですが、熱が高い時にテオフィリンを服用すると血中濃度が上昇してけいれんを起こしやすくなるため注意が必要です。
また、睡眠不足や疲労がたまると、てんかん発作が起こりやすくなります。発作が止まっていたのに、受験勉強で睡眠不足が続いたり、仕事が忙しくてストレスが溜まったり、お酒を飲み過ぎたことがきっかけで、発作が再発することもあります。

熱性けいれんとの違いについてお聞かせください。

けいれんは発作の様子を表す言葉で、てんかん発作だけでなく高熱や低血糖や中毒の時にもけいれんが起こります。
代表的なものとして、赤ちゃんが発熱の時に起こす「熱性けいれん」があります。脳が未熟な赤ちゃんはちょっとした熱でもけいれん(ひきつけ)を起こすことがあります。幼児期、学童期でも熱性けいれんを起こしやすい体質の子がいます。インフルエンザの季節は急な発熱に注意してください。
熱を伴うけいれんのほとんどは熱性けいれんですが、菌やウィルスが直接脳の神経を傷害して脳炎や脳症を引き起こした場合も、けいれんと発熱があります。頻度こそ少ないものの、脳炎や脳症は生命に危険が及ぶ恐れのある重篤な病気です。
また、乳児重症ミオクロニーてんかんのように、最初の発作が熱性けいれんから始まるてんかんもあります。熱性けいれんがだんだん止まりにくくなって、次第に知能の発達に遅れが見られるようになり、熱がないのにけいれんが起こるようになります。乳児重症ミオクロニーてんかんは乳幼児に頻度が高く、熱性けいれんの中にはこのような難治てんかんが隠れていることもあります。

発作が起きた時はどうすればいいですか?

けいれんが起きた時に体がどうなっているかと言うと、神経が凄く興奮していて、曲げる筋肉も伸ばす筋肉も同時にカチカチになっている状態です。呼吸も浅く、心臓のポンプの作用も弱くなっています。
お子さんがけいれんを起こした時、まずは呼吸の介助を行って下さい。ベルトやボタンをゆるめて、呼吸を楽にしてあげます。喉に唾液がたまっても飲み込むことができない状態ですので、唾液が空気の通りの妨げにならないように、顔を横に向けてよだれが垂れ落ちるようにしてあげましょう。
食事中にけいれん発作が起きた場合は、食べ物が気管を詰まらせてしまう恐れがあるため、口の中にあるものは取り除いてください。舌を噛まないように箸を噛ませたり、口に指を突っ込んだりしないでください。歯が折れてしまいますし、指を突っ込むと凄い力で噛まれてケガをしてしまいます。
呼吸が楽にできる姿勢にしてあげること。そして発作が何分くらい続いたのか覚えておいてください。

けいれんが長時間続くこともあるのですか?

てんかんや熱性けいれんのけいれんは、数分でおさまることがほとんどですが、けいれんが長時間続いて止まらないこともあります(重積状態)。
けいれんが起こっている間も脳に酸素は行っています。興奮している脳は普段以上に酸素や栄養が必要ですが、ポンプの役目をする心臓がうまく働けない状態なので相対的に酸素不足になっていて、その状態が長時間続くと正常に働いていた神経までやられてしまい、後遺症が残ることがあります。
けいれん時間が10分〜15分が重積を疑う目安になりますので、救急車を呼んだり、病院へ直接連れて行ってください。
熱性けいれんを何度も繰り返すお子さんは、けいれん止めのお薬を予防投与することがあります。

診断の際はどのような検査を行いますか?

問診でお母さんから発作の状況を伺い、脳波検査をもとにどのタイプのてんかんであるかを見極めていきます。
てんかんの診断で最も重要なのは、脳波の検査です。脳神経は寝ている時も起きている時も電気を発していて、その電気活動の乱れがけいれん波として脳波に現れます。検査では脳の電気活動を記録していき、てんかん特有の異常な波がないかを調べます。
また、MRIやCTを使った画像検査では、脳の先天的な異常や脳腫瘍や血管の異常がないかを見ます。
血液検査は診断のためと、お薬が十分に効いているかどうかを確かめるために行います。お薬が濃過ぎると副作用が出るし、薄過ぎると効果が出ません。抗てんかん薬は長期間服用しますので、肝機能障害などの副作用を避けるためにも、定期的に血液検査をします。

てんかん 癲癇 てんかん発作 欠神発作 けいれん ひきつけ ぼんやり 発達障害 意識 大脳の神経細胞 ポケモンショック 知能が低下 迷走神経治療術 抗てんかん薬 脳波検査 重積状態 乳児重症ミオクロニーてんかん 熱性けいれん 脳炎 脳症 インフルエンザ テオフィリン 抗ヒスタミン剤 鼻水止め 花粉症 ぜんそく 前頭葉 頭頂葉 側頭葉 後頭葉 口から泡を吹いて突然倒れる SMEI むらき小児科 村木幸太郎 先生
広島電鉄「高須駅」より徒歩1分 。むらき小児科は高須サンフラワービル2F
 

治療についてお聞かせください。

治療は抗てんかん薬の服用が中心となります。抗てんかん薬は脳の過剰興奮を抑えて発作が起きないようにするもので、てんかんの種類によってどのお薬を使うかが変わります。
抗てんかん薬は次々と開発されていて、種類も増え、昔に比べてより有効な治療ができるようになりました。
また、神経細胞の悪い部分だけを取る脳外科的手術の技術が飛躍的に進歩しました。迷走神経刺激術といって開頭を行わない外科的手術も増えています。
てんかん治療は以前は薬物療法だけでしたが、外科的手術という選択肢が増え、治療の幅はぐんと広がりました。

自分の子が「てんかんかもしれない」と心配だったら?

てんかんの発作は気付きにくいものもあります。たとえば2ヶ月くらいの赤ちゃんだと体がピクピクすることが増えたとか、小学生だと学校の成績が急に落ちたり、今まできれいに書けていた字が急に下手になったという場合は発作が起きていることがあります。
もしお子さんで不安に思うことがありましたら、専門医に相談してもらえばと思います。
てんかんと密接な関係にあるのが発達障害です。発達障害とは注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの総称ですが、てんかんと同じく脳機能の障害であり、合併することがあります。またてんかんの発作が頻繁になると、発達にも影響が出ます。
小児てんかんや発達障害は小児神経科が専門に扱うことが多く、私はこれまでてんかんや発達障害を抱えるお子さんを診てきました。その経験を今のクリニック診療に生かして、てんかんや発達障害を抱える地域の子どもたちの力になりたいと思っています。

医師のプロフィール

村木幸太郎 先生

●岐阜大学医学部医学科卒業
●広島大学医学部大学院卒業
●広島大学医学部小児科、総合診療部
●広島赤十字原爆病院小児科
●広島市児童総合相談センター
●済生会広島病院小児科
●国立病院機構呉医療センター小児科

‐資格・所属学会‐
・日本小児科学会 認定医
・日本小児神経学会 認定医
・日本臨床神経生理学会
・日本てんかん学会
・日本小児感染症学会
・日本外来小児科学会


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